 | 徒然草(第7段)
あだしののつゆきゆるときなく、とりべやまのけぶりたちいらでのみ すみはつるならひならば、いかにもののあはれもなからん。よはさだめなきこそいみじけれ。
いのちあるものをみるに、ひとばかりひさしきはなし。かげろふのゆうべをまち、なつのせみのはるあきをしらぬもあるぞかし。つくづくとひととせをくらすほどだにも、こよなうのどけしや。あかず、おしとおもはば、ちとせをすぐすとも、ひとよのゆめのここちこそせめ。すみはてぬよにみにくきすがたをまちえて、なにかはせん。いのちながければはぢおおし。ながくとも、よそぢにたらぬほどにてしなんこそ、めやすかるべけれ。
そのほどすぎぬれば、かたちをはづるこころもなく、ひとにいでいでまじわらはんことをおもひ、ゆうべのひにしそんをあいして、さかゆくすえをみんまでのいのちをあらまし、ひたすらよをむさぼるこころのみふかく、もののあはれもしらずなりゆくなん、あさましき。
(397文字)
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 | 徒然草(第122段)
ひとのさいのうは、ふみあきらかにして、ひじりのおしえをしれるをだいいちとす。つぎには、てがくこと、むねとすることはなくとも、これをならふべし。がくもんにたよりあらんためなり。つぎに、いじゅつをならふべし。みをやしなひ、ひとをたすけ、ちゅうこうのつとめも、いにあらずはあるべからず。つぎに、ゆみい、うまにのること、りくげいにいだせり。かならずこれをうかがふべし。ぶん、ぶ、いのみち、まことに、かけてはあるべからず。これをまなばんをば、いたづらなるひとといふべからず。つぎに、しょくは、ひとのてんなり。よくあじはひをととのへしれるひと、おおきなるとくとすべし。つぎにさいく、よろづにえうおおしし。
このほかのことども、たのうはくんしのはづるところなり。しいかにたくみに、しちくにたえなるはゆうげんのみち、くんしんこれをおもくすといへども、いまのよには、これをもちてよをおさむむること、やうやくおろかになるににたり。こがねはすぐれたれども、くろがねのやくおおきにしかざるがごとし。(437文字)
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 | 枕草子(第1段)
はるは、あけぼの。やうやうしろくなりゆく、やまぎはすこしあかりて、むらさきだちたるくものほそくたなびきたる。
なつは、よる。つきのころはさらなり、やみもなほ、ほたるのおおくとびちがひたる。また、ただひとつふたつなど、ほのかにうちひかりていくも、をかし。あめなどふるも、をかし。
あきは、ゆうぐれ。ゆうひのさして、やまのは いとちこうなりたるに、とりのねどころへいくとて、みつよつ、ふたつみつなど、とびいそぐさへあはれなり。まいて、かりなどのつらねたるが、いとちいさくみゆるは、いとをかし。ひいりはてて、かぜのおと、むしのねなど、はたいふべきにあらず。
ふゆは、つとめて。ゆきのふりたるはいふべきにもあらず。しものいとしろきも、またさらでも、いとさむきに、ひなどいそぎぎおこして、すみもてわたるも、いとつきづきし。ひるになりて、ぬるくゆるびもていけば、ひおけのひもしろきはいがちになりて、わろし。(397文字)
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