
ナイターやサマータイムは、有名な和製英語です。これらは、アメリカではそれぞれnight game, daylight savingと言う語があります。このような、和製英語は聞き慣れてしまうと、ついつい英語の会話の中で使ってしまいます。使ってしまっても、それが和製英語であることを知っていたら、問題にはなりません。相手が怪訝な顔をしたのを見て取って、はっと気がつけば、言い直してそれでおしまいです。プレゼンテーションや、スピーチなど、多くの人に向かって話すときは、相手の怪訝さが受け取りにくいので、そのままになってしまうかもしれませんが、日本人の英語として、それなりに受け流してくれるレベルのことだと思います。 ところが、もう一つのタイプの和製英語が存在します。これらは、和製英語であることが気がつきにくく、根が深い。また、発音にも大きく影響するので、前者の和製英語とは比べものにならないほど、致命的なミスになることもあります。 わかりやすい例をあげる前に、文化庁のこのページ(外来語言い換え等一覧)を見て下さい。ここには、外来語の原語としての語と日本で使われるときの意味があります。英和辞書をひいていただければ、わかると思いますが、(1)日米で同じ意味のものと(2)意味が限定して使われているものと、(3)意味が変化したものの3種類があることに気づかれると思います。 例えば、アウトソーシングとout sourcingは、ほぼ同義です。(他には、キャピタルゲインなど)アクセスは、英語にある意味の一部が日本語として通用しています。(インパクトなど)アジェンダは、英語の意味とは異なっています。(*1)(シーズなど) 全く変わった意味のものは、最初の日本人が作り出した和製英語と同じ類なので、違いがわかりやすいですが、英語の意味の一部だけを日本語にしたものは、会話のすれ違いの原因になります。これが第2の和製英語で、こちらの方が弊害が大きい。
わかりやすい例を2つあげます。 1つ目。「リストラ」 リストラ自身は、和製英語です。本来の語は、ご存じのようにリストラクチャリング(restructuing)です。日本語のリストラの使われ方の99%は、人件費削減を目的とした活動です。端的なのは解雇、やんわりとしたのが給与カット。(ちょっと前までは解雇だけでした。)英語で解雇は、lay off(レイオフ)です。(*2)リストラクチャリングは、re-structuringなので、構造を変革することを言います。その際の一部の結果としてlay offがありますが、lay offがrestructuringの目的そのものになることはありません。90年代の前半にアメリカではやって日本に紹介された当初は、この構造変革の意味を説いた本が沢山ありましたが、昨今のニュースアナウンサーの言うことばには、この意味の影が薄れています。だから、当初リストラクチャリングとリエンジニアリングが製造関係では一体化されて考えられていたことなどがリストラの語からだと、 見当がつかないと思います。 「リストラ断行。全体のXX%にあたる○○○人を解雇へ」とある記事は、そのまま英語にすると意味が通じなくなるのがお分かりいただけると思います。 2つ目。「ビジネスモデル」 最近の流行ことばとして日本のビジネス書籍に頻繁に現れることばです。私も、日本の企業に問い合わせの電話をしたときに「サンプルをお出し頂くなど、ご協力いただけますか?」「弊社のビジネスモデルに合わせて、検討させて頂きます。」「???」なんてことを2,3回経験しました。また、別の所では、「この品物の販売プランのビジネスモデルを検討しますので、少々お時間を頂けますか?」「???」というのもありました。 私の知るビジネスモデルと言う語は、知人のビジネスデザイナー(この語は今私が思いついた語で、普通はビジネスコンサルタント、会社ならコンサルティングファームです)の受け売りです。この語は、もともとこの方面からでてきた語と思われますから、そうそうはずれていないと思います。 彼の言うビジネスモデルとは、制約事項(constrain)を持つ案件に対し、フレームワークを通じて作られたモデルによって思考をすすめ、抽出されたコンセプトから作られる「ビジネスの仕組み」です。なぜ、フレームワークでのモデル化が必要かというと、検討範囲の漏れをなくすこととモデル化することでのハンドリングしやすくするためです。このフレームワークがきちんとできると、思考に無駄がなくなり、すぐれたコンセプトの抽出から、より可能性の高いビジネスモデルを作り上げることができます。また、なんらかの不慮のことが起こっても、モデル化が十分になされていれば、何かトラブルが起こっても、将来それによって引き起こされる連鎖的な事象が推定できるので、カバーの方法も自ずと見えてきます。また、よいフレームワークでのモデル化があると、その事業のビジョン、オブジェクト、ゴールが明確になりますから、優れたビジネスモデルになると言えます。 さて、ビジネスモデルとはこういうビジネス全体の仕組みを指す語として私は受け取っている(少なくとも、アメリカのその業界で一流として働く私の知人は、その業界での語として私に教えてくれた)ので、ビジネスの一部分のためのビジネスモデルというのは、理解できません。大体、大方の場合、聞いてみると対象となる事柄がモデル化されていません。文化庁の言い換えではありませんが、正しい日本語でビジネスモデルの代わりに生産計画(production schedule)とか販売・マーケティング戦術(sales plan, marketing tactics)と言う方が誤解が少ないと思います。(*3) 日本人である私は、日頃から日本の新聞なり少ないですが情報は入っています。だから、適当にことばを置き換えて、電話なら確認しながらお話を進めることができます。でも、英語 の環境下でアメリカの企業の人と会話したらどうなるでしょうか? 06/26/03 |
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*1:私の知る日本の人は、英語と同じ意味でアジェンダ(Agenda)を使っています。こんな使い方が一般的であるというのはこの文化庁の資料をみて初めて知りました。基本的に政治家だけが使う言い方で、一般的には思えません。シーズもseedには技術に関するという意味合いはありません。文章の中で比喩的に使われている例はありますが、文化庁の”将来に大きな発展を予想させる新技術”という意味合いは、seedsの1語から引き出すことはできないと思われます。 *2:fireも解雇ですが、lay offは業績による会社都合解雇、fireは対象個人が原因の解雇(懲戒免職)の意味です。 *3:そういえば、tacticsとstrategyの混乱も多いですね。 中にはvisionもこれらと同義とされてお話しされているのを聞いたことがあります。 |
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07/16/03 Updated
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